一般社員は人を動かそうとしなくていい、という考察

仕事

皆さんは、大小問わず社内でのあらゆる交渉事において「良かれと思って提案したのに却下された…」「なかなか理解してもらえない…」「メリットの方が明らかに多いのに…」と気をもんだ経験はないでしょうか。

筆者は企画職という職種柄か、あるいは目標達成意識が高く自分にも他人にも厳しいタイプだからか、上記のような気持ちを抱える瞬間が多々あります。

一年前の自分の日記にこんな悩みが書いてあり、今でも瞬間的にもやっとすることはあるのですが、

最近は頭の中で割と機械的に整理できるようになってきたので、一年前の自分に声をかけてあげるつもりで記事を書きます。

会社の将来的な機会の損失はあなたのせいじゃない

ほとんどの会社には売上や粗利などの面で明確な最終目標(以下、KGIと表現します)があって、それを達成するための働きが社員には求められていると思います。

それを達成するためのKPIが明確にあったり、ノルマを課せられていたり、あるいは目標達成意識の高い個人の場合は、何とかその数値を達成できるように個人目標等を立てて努力しますよね。

私の場合、やるべきときに努力しなければ、努力しなかった分が将来的に売上などの機会損失に繋がるので頑張るべきだと思っているのですが、それに加えて、全体目標なんだからみんなも頑張るべきだよね?と思っているところも多々…

売上目標を長らく達成できていないのに言われたことだけをやっている同僚、できない理由を挙げて提案を却下する上司…せっかくこちらにやる気があっても、周りが同じ気持ちでなければ士気は下がる一方。

ただし、この時ふと立ち止まって考えたいことが二つ。

一つは、「自分一人の力で局面を大きく動かせるはずだと自信過剰になってはいないか?」ということ。

「やる気が伝われば」「うまく説明できれば」「これが正しいと証明できれば」みんなにとって良いことだし、周りを動かせるはず…とまるで狂いのない計算式のように考えるときがあるのですが、

この考え方は色んなバイアスが抜けています。各人のバックグラウンド、仕事をする動機、性格、価値観、知能、立場…

良好な人間関係の構築・チームビルディングに絶対解があるのなら、この世にイジメもないし、どんな会社も業績右肩上がりだし、戦争も起きないはず。

自分が悩んでいることが、実は自分一人で短期的に解決できるレベルの悩みではないことを自覚(客観的に認める)ことが第一歩なのかな、と…

そして二つ目が、「その人たちをその時動かせなかったことが、自分のキャリアや査定に響くのか?」という点。

説明上どうしても即物的な表現になってしまうのですが…

たとえば、私の会社での地位は「一般社員」。

そして我が社の場合、一般社員の給与・賞与の査定基準は「行動規範」とされており、売上などの成果は基本的には加味されません。

つまりこれを読み解くと、私のような一般社員はKGIの達成に対し、数字として達成することへの責任は無い(期待されていない)と捉えられるはず。

「査定基準を満たす行動を確実に取ること」こそが会社から一般社員に与えられたKPIなのであって、そもそも売上とか粗利のような数字を意識する必要は(会社の人事方針上)無いんです。

数字を大きく飛躍させるにはみんなの力が必要で、そのためには適切なチームビルディングを行うことが必要になってきますが、それはそういった数字の達成をKPIとされている役職の人の仕事。

そう考えると、人を動かせなかった場合の将来的な機会の損失は私のせいではないし、勝手に責任を感じる必要がありません。

人を動かすことができなかったことで、会社から信頼を失ったり、キャリアに傷がついたり、給与査定においてマイナスポイントにはなることはありません。

あえてデメリットを挙げるのなら、成し遂げられなかったふがいなさを大なり小なり自分の中で感じるくらいでしょうか…

そういった個人の心の機微があること以外、会社も周りも自分の評価も 99% 何も変わっていないのが事実です。

…………………

ただしこれは、個人のせいではないから頑張る必要がない…といった結論の話ではなく、

頑張るべきポイントを自分で決めずに、客観的な視点において自分の役割を正確に捉えてそこに注力することが、

うまくいく組織とその一社員としての行動の正解になりうるのでは…?といった考察になります。

「より良い組織にするための意見があるのに、何も提言しないのが正解なのか」

といった声が聞こえてきそうですが、

一個人が会社や組織にわざわざ提言したいほど感じている軋轢は、一人の意見だけでは無い(意外とみんな思っている)ことが往々にしてありますし、水面下で解決に向けて既に動いている可能性があります。そうでなければ、自分自身が責任と実行力をもって進言していくことは大いにアリだと考えます。

上記で書いたような我が社での話は、あくまで”我が社における一般社員”の話であって、全ての一般社員に当てはまるわけではありませんが、

一度、会社のKGIと、自分に求められているKPIを客観的に把握することから始めると、「周りが分かってくれない…」等のストレスを根本的に見直し、手離すきっかけになるかもしれません。

補足として、「一般社員は行動規範のみが査定基準」という会社の方針でそもそも良いのか?という意見もありそうですが、

それこそも、上記考察を踏まえると、一般社員が本気で考えることではなくて、”査定基準を考える役割を与えられた人”が責任を持って再考することだと言えそうです。

そもそも、目的を共有できていない相手を動かすのはあなたのtodoではない

一般的に、”人を動かす”ことは簡単なことではありません。

風通しが良く、みんなが同じ目標をしっかりと見据えられていて、一人一人が優秀で、社内において実績もある…例えばそんなチームだったら色々とスムーズにいくのかもしれません。

が、そんな組織ばかりではないのが現実ですよね。

そんな時、「良いチーム作って目標を達成できるチームにしたい」と考える私のような人間は、「どうやったらやる気を起こすことができるんだろう?」という発想にもっていってしまいがち…

ですが冒頭で書いた通り、人のやる気を起こす(人を動かす)ことって、かなり難しい。

やる気・能力・自発性・チームワーク力等といった、いわゆる”非認知能力”と呼ばれる領域のスキルは、一般的に周囲が何かを働きかけて育てるには難しい領域だと言われています。

アメリカの学者、アンジェラ・リー・ダックワースがTEDのトークにおいても

やり抜く力を育てる方法を、私たち人間も科学もほとんど知らない

https://youtu.be/GfF2e0vyGM4

と発言しています。

その道の研究者でもな、いち一般社員が思いつきで行動してすぐに結果が出せることではない、という客観的な認知がまず必要です。

その前提の上で、”人を動かす”ことは、一般社員にタスクとして求められていることではない、と私は考えます。

わたしの仕事じゃない、とばっさり切るのではなく、自分で勝手に作り上げたtodoに対する”執着”を自分から切り離すイメージです。

一緒の目標を見据えて一緒に努力できる人材を選ぶのも、育てるのも、会社にタスクとして与えられたときに初めて考える方が

貴重な時間も精神もすり減らすのを抑えられるので、結局は効率が良いはず。

難易度の高い課題は、時間ができてから考えよう(それよりやることあるよね?)

少し話が逸れてしまうかもしれませんが、

そもそも、”会社からミッションとして与えられているわけではない”、”人を動かす”という難易度の高い仕事に自発的に取り組む前に、もともと会社から与えられているタスクは十分にこなしているか?

と、私は自問自答するようにしています。

私はキャリアとして今まで制作アシスタント1年・営業(事務)職8年・企画職1年を経験していますが、

今も昔も、振り返ればそれぞれ本当にやることだらけ。

制作アシスタントはとにかくPMの使いぱしりで(笑)、時間の余裕がそもそも無く、自ら考えて行動するという場面がほぼありませんでしたが、

営業職だと、繁忙期は通常業務をさばくことで精一杯だったりしますが、それと並行して「どうやったら商談成功率を上げられるか」「どうやったら受注から納品までの期間や工数を削減して生産性をあげられるか」…など、改善すべきこと・考えることは山ほどあります。

企画職も同じく、「どうやったらリードの獲得を増やせるか」「どのプラットフォームに広告投資すべきか」など、

それぞれの職種や分野で、時間や思考をかけて注力しなければならない、会社から与えられたタスクがあるはず。

“会社から与えられたミッション”を把握し、まずはそれに全力で取り組むこと。

職種を一緒くたにしてしまいますが、例えば

  • コミュニケーション力やプレゼン力向上のためのワークショップに参加する
  • 業務上必要なスキル、資格を身につける
  • 情報に敏感になる、それを仲間と共有する
  • 業務フローを見直し、小さく実践してみる
  • 数字に対して考察、改善のための具体的なアイデアを常にもち、少しずつアウトプットする

など、組織の発展のために個人レベルでできることは、実はたくさんある(はず)。

人を動かすとか、複数人へ意見を通すという取り組みは、それが出来た後に自然にやってくるもので、

まずは与えられているタスクをしっかりとこなし、実績を積み重ね、周りから信頼を得られて、初めて社内で意見を通しやすくなる…といった地道な面もあると思います。

それでも注力したければチャレンジしてもいいのかも。何にせよまずは自分で動こう

自分が作り上げたtodoと会社から与えられたtodoを切り離して考えた上で、それでもやった方がみんなのためだしそれが自分のミッションだ、

と感じるのであれば、やってみてもいいのかもしれません。(私の周りで成功した例を見たことが一度もありませんが…)

最後に、会社の先輩が “会社を動かした”例で私がすばらしいなと思った出来事を書いて締めようと思います。

その方は、とある単一の商材を手配する業務の部署に所属しています。

10年前は人手と受注数がバランスよく推移していたのですが、年々受注数が増えてきた&元々が低単価商材だったこともあり、人が少ない中で「薄利多売」を実現しなければならなくなりました。

「人は増やせないけど、何とか考えて何とかしてくれ」という会社からの暗黙のミッションが彼に与えられたわけです…

そこで彼が取り組んだのが、RPA。

RPAとは簡単に言うと、PCの定型作業を自動化できるシステムのことです。

彼は会社からのミッションを認知し、独自で調べRPAというシステムを見つけ出し、トライアルをし、上司にプレゼンし、会社からシステム導入の承認を得て、始動し、月数十時間の業務時間削減を実現。

その功績が認められて、業務効率化プロジェクトやRPAの社内普及の責任者となり、今ではほぼ全部署でRPAが導入されるようになりました。

私は、この一連の流れが、”会社から与えられたミッション”をしっかりとこなし、結果的に(副産物として)”人を動かす”ことになった、良いケーススタディーだと感じています。

彼いわく、会社からのミッションを認知し、大幅な業務時間削減を達成するまで1年半〜2年ほどかかったそうで、スムーズにすぐに結果が出たわけではない…ということが分かります。

“人を動かす”ということは、まずは自分の手を動かして、少しずつ成功体験を積み上げた先に結果としてついてくるものなんだろうな、

そのフローでのみ、自分良し・相手良し・会社良しの三方良しが実現するのではないかな、

と感じた一連の出来事でした。

大きなことでも小さなことでも、何にせよ人のせいにせずまず自分から動く。小さく成果を出し続ける。

私が周りに流されず、自分らしく楽しく仕事をする上で、1番大切にしていることです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました